報道発表資料

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1997年11月21日

中央環境審議会答申「悪臭防止対策の今後のあり方について(第二次答申)」について - 臭気指数規制に係る気体排出口の規制基準の設定方法について -

11月21日に中央環境審議会大気部会(部会長:斎藤孟 早稲田大学名誉教授)が開催され臭気指数規制に係る気体排出口の規制基準の設定方法についての答申がまとめられた。
 この答申の要点は以下のとおりであり、環境庁においては、この答申を踏まえ悪臭防止法施行規則の改正等所要の手続きを進めることとしている。

 悪臭防止対策の今後のあり方について(第二次答申)

 臭気指数規制に係る気体排出口の規制基準の設定方法について

 複合臭気の問題等に対応するため導入された嗅覚測定法による臭気指数規制のうち、気体排出口における規制基準(2号基準)については、悪臭防止対策の今後のあり方に関する平成7年3月の中央環境審議会第1次答申において、排気口から排出される拡散した臭気が着地点で、敷地境界線における規制基準(1号基準)に適合するよう定めることとされており、今回の答申は、この考え方に基づいて2号基準の設定方法をまとめたもの。
 具体的には、煙突等の気体排出口における規制基準の設定方法は、次の通り定めることが適当であるとしている。
 ・ 排出口高さが15m以上の施設については、大気拡散式に基づく臭気排出強度による規制、15m未満の施設については、排出口の規模に応じた臭気指数規制を行う。
 ・ 悪臭被害発生の特性を勘案し、短時間の拡散の評価、建屋による拡散への影響(ダウンドラフト)などを考慮した方法を採用する。
 なお、臭気指数規制に係る排出水についての規制基準の設定方法についても、引き続き審議される予定。

1.経緯
 中央環境審議会(会長:近藤次郎 元日本学術会議会長)は、平成7年1月17日付けで諮問された「悪臭防止対策の今後のあり方について」について、平成7年3月3日付けの第一次答申以降、大気部会及び同部会に設置した悪臭専門委員会(委員長:猿田勝美 神奈川大学名誉教授)で審議を進めてきた(別添1)。
 11月21日(金)に開催予定の第20回大気部会において、平成7年1月17日付け諮問に対する第二次答申として、臭気指数規制に係る気体排出口の規制基準の設定方法を内容とする「悪臭防止対策の今後のあり方について(第二次答申)」がまとめられた。

2.「悪臭防止対策の今後のあり方について(第二次答申)」の概要

(1)臭気指数2号規制基準とは
 工場・事業場の煙突等の排出口から排出される臭気の着地点における臭気指数を、1号基準(敷地境界線における基準)の臭気指数と同等にするために、排出口から排出される臭気を規制するもの。

(注)1号基準(敷地境界線における基準)は、臭気指数が10から21の間の値であって、都道府県知事が定める値。

(2)臭気指数2号規制基準の設定方法  排出口の高さによって臭気の大気拡散が異なるため、実態調査の結果を踏まえて、排出口の高さが15メートル以上の施設と未満の施設とを分けて、設定方法を2種類設けた。

 {1}排出口の高さが15メートル以上の場合

・指   標  : 臭気排出強度
・大気拡散式  : 建屋の影響による拡散場の乱れ(ダウンドラフト)
を考慮した大気拡散式

 大気拡散式を用いて、建物条件、排気流量等をあてはめることによって、排出口からの臭気の排出量(臭気排出強度)を求める方法とした。

 {2}排出口の高さが15メートル未満の場合

・指   標  : 臭気指数
・大気拡散式  : 流量を測定しない簡易な方法            

 排出口の高さの低い、小規模な施設については、建屋影響を強く受けること及び一般に臭気排出強度が小さいことから、精度の面から見て、流量を測定しない簡易な方法を用いることも許容されると考えられること、また、小規模な施設についてまで流量の測定を行うこととすることは実際上困難であることから、排出口の高さが一定以下のものについては、臭気指数を指標とした簡易な方法とした。


(別添1)

今回の中央環境審議会答申に至る経緯について


 1.大気部会の審議状況

 平成7年

  1月17日  第5回大気部会 「悪臭防止対策の今後のあり方について」諮問。
悪臭専門委員会に付議。
  3月 2日  第7回大気部会 「悪臭防止対策の今後のあり方について(第一次答申)」答申。


平成9年

  6月20日  第18回大気部会 悪臭防止法に基づく臭気指数2号規制基準の設定に係る審議について等
 11月21日  第20回大気部会 「悪臭防止対策の今後のあり方について(第二次答申)」 - 臭気指数規制に係る気体排出口における規制基準の設定方法について - 答申。



 2.専門委員会の審議状況

 悪臭専門委員会(答申(平成7年3月2日)以降)

第6回 8月21日
      ・気体排出口における臭気指数の規制基準を定める方法等について

第7回 11月5日
      ・専門委員会第二次報告の取りまとめ


(別添2)

我が国の悪臭対策について

 ○ 市町村が受ける苦情の件数は、全国で毎年1万程度。これは、典型7公害中第2位の件数。
 ○ 発生源別に苦情件数をみると、最近では、サービス業、畜産農業、下水・用水、食品製造工場、化学工場等の順。

悪臭防止法による規制の概要

工場・事業場からの悪臭に対する規制

 都道府県知事が、規制地域を指定し、国の定める方法で規制基準を設定 

規制地域内の工場・事業場は、規制基準を遵守しなければならない。

都道府県知事(市町村長に事務委任)は、工場・事業場に対して、
改善勧告、改善命令(命令違反は、罰則)

規  制  方  法
   特定悪臭物質規制

アンモニア、硫化水素等の物質の濃度の規制
  
   臭気指数規制
平成7年の悪臭防止法改正により追加。
  人間の嗅覚で臭気を感じななくまで希釈した時の希釈倍数を基礎として算定される値による規制

   ◆ 臭気指数規制は、特定悪臭物質規制の方法では十分でない規制地域に、特定悪臭物質規制に代えて適用。

規  制  基  準
1号
敷地境界線の規制基準

事業場の境界線における基準

2号
気体排出口の規制基準

煙突等からの悪臭の着地点での値が、1号の値と同等になるための気体排出口での基準

3号
排出水の規制基準

事業場からの排出水による悪臭の値が、1号の値と同等になるための排出水の基準

   ◆ 2種類の規制方法ごとに、3種類の規制基準を設定。
 
   ■  これまで、特定悪臭物質規制の1号、2号、3号、臭気指数規制の1号を設定
   ■  今回の専門委員会報告は、臭気指数規制の2号(気体排出口の基準値の設定方法)に関するもの。


(別添3)

    用語の解説

○ 臭気濃度
 
人間の嗅覚で臭気を感知することができなくなるまで希釈した場合におけるその希釈の倍数を臭気濃度という。


○ 臭気指数

 刺激量と人間の感覚量の間には、Weber-Fechnerの法則が成り立ち、感覚量は刺激量の対数に比例することから、臭気濃度を対数で表示したものを臭気指数という。

 臭気指数=10×Log(臭気濃度)


○ 臭気排出強度

 臭気排出強度=(臭気濃度)×(排出ガス量)


○ 建屋による拡散への影響(ダウンドラフト)

 煙突の近くに、あまり高さが違わない建屋等がある場合、煙突から放出された気塊は建屋背後に生じる気流の乱れや渦によって巻き込まれ、急激に下方へ拡散しつつ、地表付近に吹き下ろされる現象をいう。

(図省略)

連絡先
環境庁大気保全局企画課大気生活環境室
室長 竹内 恒夫(内線6540)
 補佐 小柳 勝彦(内線6542)